高齢になると、一人暮らしや家庭での介助が困難になり、老人ホームへの入居を考えることになるでしょう。老人ホームに入居する際には、まずケアマネジャーによる要介護度の認定を受けなければなりません。要介護度とはどんなものでしょうか?そして、認定された要介護度によって、老人ホームの入居にどんな影響があるのでしょうか?老人ホーム入居における要介護度認定の意義や役割について解説しましょう。
介護サービスの必要な高齢者や障がい者のことを要介護者と呼ぶことがあります。要介護者は、要介護度認定により身体の不自由度が5段階のうちどのランクに当てはまるか認定された人を指します。要介護度は、最も重度のレベルが5で、一番軽度が1になります。
要介護度の認定は、日常生活をどの程度自力で行えるかを見て、身体の不自由度を見極めることにより算定が可能です。認知症の進行度も考慮され、どの程度理解力や判断力があるかという点も、参考にされます。認定された要介護度により、老人ホームへの入居の可否や、入居後の利用料負担の額が変わってきます。
したがって、老人ホームに入居しようと思ったら、まず住居の最寄りの役所にある福祉課などの行政機関に相談して、福祉事務所を紹介してもらい、所属のケアマネジャーと面談して要介護度認定を受けなければなりません。
ケアマネジャーは、個々の相談に応じて訪問等を行い要介護度を認定します。要介護度や要支援度を認定したら、最適な施設を紹介してくれるでしょう。どんなケアマネジャーと出会えるかが、最適な老人ホームに入居できるかどうかを決める重要なポイントとなります。
良いケアマネジャーと出会えれば、時には世間に知られていない裏事情を教えてくれて、表面的には良さそうに見える老人ホームの裏側を明かし、より良い老人ホームへの入居を勧めてくれることもあります。さらに、ケアマネジャーはケアプランを作成し、介護計画に基づき利用者が最善のサービスを受けられるよう方針を定めてくれます。
モニタリングをして利用者の状況を把握し、認知症が進んでいたり身体の不自由度が強くなっていたりした場合には、要介護度認定を変更し、より重度の要介護度を認定することもあります。
要介護度5の利用者は、日常生活全般において自立が不可能であり、常に介助が欠かせないレベルで、移動や入浴だけでなく、食事や排泄にも介助が必要です。たとえば、寝返りさえ自力でうてない寝たきりの利用者が要介護度5に該当します。
認知症も進み、意識がはっきりしない時が多く、問題行動も顕著に見られる場合となります。
要介護度5ほど深刻な状態ではないものの、日常生活全般について自立が困難で、食事や排泄などの身体介助が必要なレベルです。完全な寝たきりとは言えないものの、ほぼ寝たきりに近い状態で、自力で日常生活を送れる場面は極めて限られます。
判断力や理解力も著しく低下し、問題行動に至ることもあります。
要介護度3は、最も重度の5と一番軽度の1の中間であり、ほぼ全面的な介助が必要となるものの、介助すれば立ち上がりや歩行も可能な段階だと言えるでしょう。
要介護2の利用者は、部分的な介助があれば、日常生活を営むことができます。食事や排泄にも一部介助が必要ですが、自力で可能な部分もあり、全面的な介助は必要ありません。立ち上がりや歩行も、支えてあげればある程度自力で行うことが可能です。
要介護度1は、日常生活においてほとんど介助がなくても問題ないものの、入浴など一部のみ介助が必要な段階です。ベッドから起き上がる際に介助が必要だったり、歩行の際に手すりや杖などを使用する場合を指します。
要介護認定を受けるほど日常生活に支障をきたしていないレベルでも、要支援1か2の認定を受けられることがあります。要支援者は、日常生活のほとんどの場面において自力で生活できますが、起き上がりや歩行など一部の場面で、介助があるとスムーズに生活を送れるレベルとなります。
要支援者は、個人の外出の自由度が低い老人ホームではなく、サービス高齢者住宅やケアハウスなど、比較的自立度の高い施設を選択することが多いと言えるでしょう。
特別養護老人ホームなど公的支援を受けて安い入居料を払えば介護サービスを利用できる公的施設があります。こうした老人ホームに入居するためには、年収など所得面のほか、要介護度認定が重要な要素となります。すなわち、低所得で要介護度の高い者ほど優先的に入居できるのです。
特別養護老人ホームでは、入居要件として要介護度3以上と定められています。
特別養護老人ホームのような公的施設と異なり、民間の有料老人ホームに入居する際には重度の要介護者を優先する訳ではありません。高額の入居一時金や毎月の利用料を支払う資力があれば、原則として入居が可能です。しかしながら、利用者の受け入れ体制の充実のためには、要介護度が限定されることもあります。
一般的には、一定の要介護度・要支援度があれば入居可能ですが、中には要介護度2以上など限定している施設もあります。リハビリや訪問支援など要介護者に施される一般的な福祉サービスは、有料老人ホームの入居者であっても要介護度に応じた公的支援を受けて利用することは可能です。
特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、入居が前提となる高齢者用施設だけでなく、デイサービスなどの通所施設を利用する場合であっても、要介護度が利用の可否の基準となります。デイサービスは、日中だけ施設に通ってレクレーションやリハビリなどの介護サービスを受けるものですが、食事や排泄などの身体介護を受けることもできます。
通所と言っても自力で通う必要はなく、大抵の場合は送迎車で送り迎えをしてもらえます。したがって、施設の設備が整っていれば、要介護度の高い高齢者でも利用が可能な施設もあるでしょう。
通所施設ではそれぞれの環境に適した利用者を受け入れられるように、利用可能な要介護度を設定しているのです。
要介護度には客観的な基準が定められているとはいえ、ケアマネジャーによって差異が生じることも否定できません。要介護度が1つでも違えば、受けられるサービスや支援金額が変わるので、利用者にとっては死活問題です。
ケアマネジャーのほか、社会福祉士など福祉の専門家に相談して、適切なサービスを受けられるよう慎重に対処しましょう。